言葉の力ラボ––––私たちのメディアを創ろう

◉スマホの時代だからといって、思考すること、書くこと、話すことの位置が大きく変わるわけではありません。しかしながら、何かと注意散漫になりがちな現代においては、言葉で表現するに際して必要な逡巡する時間、屈折した独りの時間が失われてしまわないようにしなければなりません。とりわけ書き言葉においては、複数の事実を丹念に調べ上げ、書きながら思考し、その思考をいったん脇に置いて寄り道をし、異なる思考の筋道を想像し、忘却し、考え直し、当初は予想もしなかった細部の輝きをともなって元へと戻っていく……そのようにして言葉の力は磨かれていくのです。

本プロジェクトは、書き言葉と話し言葉の両面でプレゼンテーション力とコミュニケーション力を高めたい人に開かれています。書き言葉では、書籍や雑誌、webマガジンなどのメディアに興味のある方が、企画の立案法、ライティングの基礎、取材やインタヴューの方法、編集の技法を習得し、発信します取り組む主題は、社会的・時事的なものや文化をめぐるものが中心です。話し言葉では、コミュニケーションの不確かさや不一致、齟齬といった「伝わらなさ」から出発し、相手に「伝わる」ためにはどうしたらいいか(言葉以外の手段も含めて)考えていきます。

現代のメディア文化は、「売れるもの、わかりやすいもの」が支配的な基礎になっています。メディアの使命は、ステレオタイプのコメントを量産することではなく、「対立する意見も含め多元的であること、少数意見を大切に扱うこと」という良心に貫かれているべきだと考えますが、時間をかけて探究された多様な思考が、商業ベースに乗りにくいために発信しにくくなっています。

とするならば、「商業に対抗する、あるいは商業を意に介さない思想と実践的な行動のための場所」(スーザン・ソンタグ)をつくりだす役割が社会に求められます。既存のジャーナリズム(報道)やリエーション(芸術・文化)知についても学びながら、大学にしかできない新しい発信のしかた・表現の方法を研究・実験し、開拓・創造することを目指します。

この現象や感覚を言葉で表現するには、今自分が手にしている言葉とは別の表現が必ずあるはずだという、「他にも何か something else」(ソンタグ)に対する好奇心を開花させてください。そうした方にぜひ参加してほしいと思います。