【報告】日本のポップ・カルチャーをめぐるシンポジウム(2017年11月24~25日)

 “Japanese Pop Culture on Aesthetics and Creativity”(美学と創造性をめぐる日本のポップカルチャー)と題するシンポジウムが、2017年11月24~25日(金・土)に、本学青山キャンパスで総合文化政策学部によって開催され、日本のポップ・カルチャーの世界的な伝播について様々な見地からの対話がなされた。

初日は夕刻から2人の専門家の報告が行なわれた。まず、マッテオ・ファッブレッティMatteo Fabbretti氏(英・カーディフ大学で博士号)による発表“Manga Scanlation and the Representation of the Japanese Visual Culture”(「マンガのスカンレーションと日本の視覚文化の表象について」)だ(スカンレーションとは、漫画の台詞部分を母国語に置き換え配布する活動のこと)。続いて、ノースロップ・デイヴィス Northrop Davis氏 (米・サウスカロライナ大学教授)が「ブック・トーク」と題して、日本の漫画やアニメが驚くほど急激にハリウッドとの関係を進化させている現状を自著Manga and Anime Go To Hollywood (New York: Bloomsbury Academic, 2015) をもとに紹介した。廊下にまであふれて講演を聴く人が現れるなど、想定以上の参加者が集まり、講演者と参加者との対話も活発になされ、会場はアットホームであると同時に、熱気にあふれた。

_

2日目は早朝に始まり、前夜に続けてデイヴィス氏が基調講演 ”Peak TV and Anime: Why It Matters” を行ない、アニメ文化を研究する意義を強調した。そして、いよいよ、世界から集まった様々な視点からの発表が続くメインセッションに突入。”Adapting and Transforming Folktales in the Contemporary Period”(「現代における民話の適応と変容」)、”The Cultural Industries Across Borders”(「国境を超えた文化産業」)、”Creating and Recreating Meaning”(「創造と再創造の意味」)という3つのテーマごとに発表と活発な議論が展開した。司会とディスカッサントを務めたのは、総合文化政策学部助教のハーブ・フォンデヴィリア Herb Fondevillia氏、ファブレッティ氏、デイヴィス氏である。

 

 _

今回のシンポジウムの企画者でもあるフォンデヴィリア氏は、フィリピン出身。筑波大学で博士号を取得し、同大学助教を経て、2017年4月に総合文化政策学部助教に着任した気鋭の研究者だ。病院におけるアートを研究するほか、日本のポップ・カルチャーに影響されたアートもカバーする。最近、ハリウッドの映画が日本の影響をたくさん受けている状況を踏まえ、日本のポップ・カルチャーの国際的な影響関係を深堀するために企画されたとのこと。「日本のヴィジュアル・カルチャーは本当に強い。例えば、“怪獣” は、アメリカやヨーロッパでも “kaiju” でそのまま通じる。これは、日本のポップ・カルチャーの影響だと思う。文化だけではなくて、言葉も、スタイルも、見方にも影響を及ぼしている。だから日本人の学生にも自分たちのカルチャーにもっと興味をもってほしい」と語ってくれた。シンポジウムの開催は、学術的な発展のためであることもさることながら、あまり自国の文化に興味を示さない日本人学生への彼女からのメッセージでもあったようだ。

今や、外国における日本の文化を代表する立ち位置にある漫画やアニメ。両日にわたるシンポジウムにもかかわらず、シンポジウム終了後も参加者による食事会が催され、議論は続いた。