【報告】憲法と教育におけるカナダの多文化主義――カナダ教育学会レポート(17/11/25)

   

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カナダ教育学会の第50回記念大会・シンポジウムが、「カナダの『憲法』・多文化主義と教育」をテーマとして、2017年11月25日に青山学院大学青山キャンパスにて開催された。(主催:カナダ教育学会、共催:青山学院大学総合文化政策学会)シンポジウムは、憲法規範化したカナダ多文化主義についての基調講演、会員3名による「多文化主義と教育」に関する論点提示とフロアを含めての全体討論という構成で進められた。

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カナダが多文化主義を憲法規範化していることの意味について考えるための基調講演をおこなったのは、法学者の佐藤信行氏(中央大学大学院法務研究科教授)。カナダの多文化主義の特徴のひとつは、それが憲法化されていることであるが、同氏は、いくつかのカナダ最高裁判決を含む判例を検討することを通じて、多文化主義を巡る議論の対立を本質的に解消するには至っていないカナダの現状を紹介し、。憲法化は、多文化主義の強化に繋がるという面とともに、多文化主義の硬直化をもたらすという面をもち、また、本来の目的である多文化主義を安定的に推し進めることができる基盤になっているわけではないという指摘を行ったことが示された。

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講演の後、教育における多文化主義について、飯笹佐代子会員(青山学院大学教授)による「ケベックからの視点」、鵜飼未祐子会員(駿河台大学)による「宗教マイノリティの学校教育の視点から」、平田淳会員(佐賀大学大学院)による、「教育行政制度から見たカナダ『多文化主義』」という3者の立場から論点提示がなされた。論点提起を受けての議論では、フロアも含めて活発な議論がなされ、カナダにおける多文化主義の状況のより詳しいやりとりのみならず、日本における多文化教育のありかたについても議論が及んだ。ニュースとなった、校則により髪の毛の色を学生の地毛とは異なる黒色に染めることを求めた問題も話題に。

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多文化主義には、他者の行いに単純に目をつぶるような態度へとつながるとの批判や文化的アイデンティティの相対化につながってしまうとの批判があるが、多様な文化を認めず、他者の排除へとつながる態度は、教育の現場を考えるうえで正していくべきことだろう。憲法化はうまく機能していないとみる見解が示された一方で、教育現場での実践をみていくと、カナダの多文化主義をめぐる状況に日本が学ぶことはまだまだたくさんあるように見える。(W)

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