総合文化政策学部1年生前期の必修授業に「メディア文化概論」(担当:宮澤淳一教授)がある。その履修者有志による展示会「マイベスト展2017」が、6月12~16日の昼休みの時間帯を使って、大学3号館ロビーにて開催された。受講生有志による「マイ・ベスト展実行委員会」が企画した。

この授業では、「メディアと現代文化の織りなす諸相を総覧する」(宮澤教授のことば)ために、講義とともに様々な課題が出されている。その課題の一つ、「マイベスト」は、「学生それぞれがいちばん好きな(あるいはいちばん大切な)文化・芸術について、他者に理解できるように解説を加えてA4判の紙1枚にまとめよ」というもの。「マイベスト展」は、その成果発表という位置づけとなる。音楽、美術、映画、文学、マンガなど、カテゴリごとに分けられて、自分の好きな作品やアーティストを数点ずつ紹介する展示物をみていくと、まだ学びはじめたばかりの学生たちの今の関心が垣間見えるとともに、内なる関心を外に向けて発信するという喜びや苦心の跡が伺える。

学習したものを単にまとめるということではなく、内からあふれ出る今の自分の関心をプレゼンテーションするという課題に、学生たちはどのように取り組んだのであろうか? この展示会を企画したKさん(委員長)とIさん(同委員)に話を聞いた。

「好きなことを友達と話すことはあっても、他人に分かってもらうためにきちんとまとめる作業は初めて」の学生が多い中、「好きなことなので何枚でも書ける」にもかかわらず、「A4判というスペースにまとめる難しさ」を感じながら取り組んだようだ。確かに、A4判の用紙が本当に細かな字でびっしりと埋められているものが多かった。「好きなものが同じでも、まとめていく過程で、人それぞれ視点が異なることに気づいた」とも。課題の制作過程で、他者に伝達することの意味や他者の視点・多様な視点の存在というものを実体験として感じる機会を得たようだ。まさに自分たちがメディアとなって自分たちが好きあるいは大切に思う芸術・文化を他者に伝達するという過程もこの授業(「メディア文化概論」)らしい。

ちなみに、「総文に入ってまだ2か月あまり。こんな少しの時間でも、“作品”に対する関心の持ち方がかわった。単純な好きという感覚から、構成やマネジメントなどつくる側の視点を意識するようになった」と語っていた学生たちは、展示方法についても従来の方式からの変更を試み、工夫を加えている。例年の先輩たちが踏襲してきた展示方法は、会場を最小限に抑えるために、多数のレポートをカテゴリーごとにファイルブックにまとめたものをテーブルに並べておく形式で、一度に多数の人の閲覧は難しかったが、7名の実行委員会で議論の末、一度に多くの人に閲覧してもらうために、パネルをうまく活用してすべての成果を貼りだすいわゆるポスターセッションの形式を採用したのだという。これぞ総文に学ばんとする学生の意気込みなのだろう。

「まず、この展示で、1年生に自分の大切な“文化”を確認してもらいましたが、問題はこれからです」と宮澤教授は語る。今後の在学中に「未知の文化・芸術をたくさん体験して、自分の関心領域を拡げてほしい」のだと。その結果、大学卒業の時点で、学生ひとりひとりの「マイ・ベスト」は「やっぱり1年生のときと変わらなかった」のか、それとも、「もっと素晴らしい世界に気がついた」となるのか。「どちらでもかまいません」と教授は言う。「それが成長の結果である限り、ですが‥‥」。 人々の「好き」や「大切」と思う感覚は、人それぞれ独自の視点からのパースペクティブを伴うものである一方、社会の環境を映す鏡という側面を持つものともいえる。この展示は今年で7回目。はじめてこの課題に取り組んだ学生たちは既に次の道に進んでいる。各界で活躍する総文卒業生たちの今の “マイベスト” が気になりはじめた。(W+)